投資される経営 売買される経営 kubota

投資される経営 売買される経営
中神康議著

ゼロから事業を立ち上げようとすると目の前にやらなければならないことがいっぱいあり、さらにある程度先のことも考えないといけないので、なかなかこういう本を読むことも最近はなかったのだけど、どうしても気になってつい読んでしまった。。

上場していようと上場していなかろうと外部の収益を求める投資家を株主に入れた会社を経営している経営者にとって、投資家がどのようなことを考えているか、を認識しておくことは非常に重要だと思う。投資家にも色々な種類の投資家がいると思うのですが、この本は元々の魅力はあるのに株式市場で評価されていない上場企業に長期投資かつ敵対的ではないハンズオンで投資する運用会社を経営している著者の考えをまとめたもの。この本は経営に関するバイブルになるレベルであると思いました。

投資家に評価されるのとお客さんに評価されるのとはまた尺度が異なってくるのですが、お客さんに評価されすぎる会社はサービスを安価に提供しすぎていることが多いように思っており、それは自社の従業員、そして株主に不利益になることでもあることから、会社がsustainableであると考え長期で株式を保有しようとする株主目線に立って見ることが経営者の視点から見ると最もバランスのとれたものになると思うので、とても良い切り口だと思ってます。

経営には考えるべきことのレイヤーがいくつかあると思っており、
創業時のベンチャーなのか、上場してる等ある程度形が出来上がった企業かによってレイヤーは上下すると思うのですが、だいたい以下のようなことなのかなと思います。

1.そもそも何をやるのか、なぜやるのか
2.競争をいかに排除できるのか
3.どのような組織を作るのか
4.保有する/調達できる資金をどこにどの程度振り分けるのか
5.どのように日々の業務をこなしていくのか

1.はzero to one等の起業系の本で語られる要素で、2.は楠木さんの戦略本等で詳細に書かれている内容、3,5については数々の書籍等があり、昔から経営というとここの領域と認識されるくらいたくさんの情報が蓄積されている。

しかし、4.の部分についてはなかなかこういう点を考えながら自社の戦略を考えるべき、という指針を示すものがなかったように思う。この本はかなり具体的にこの部分で方針を策定するのに役立つのではないか。

上場企業のサラリーマン社長がもっとも対象のど真ん中に当たるのだと思うけれども、ベンチャーを創業した社長に取っても将来的にそのようなことを考えていかないといけないことを認識させてくれて、上場準備に入ったくらいから順次具体的なprincipleを自社に合わせた形で導入していけば良いのだと思う。

久しぶりに視野を広げてくれる本でした。