鉄とコンクリートの時代のメンテナンス kubota

20世紀以降の建築の歴史を振り返ると鉄とコンクリートの量産化が建築の質の向上に果たした役割はとても大きい。最近の藤森照信五十嵐太郎対談でもそんなことに触れられていました(大分ご無沙汰ですがお元気そうで嬉しいです)。人が増え続けている状況下、生産される量、強度、施工性のよさを考えると今後もそれは変わらないのではないかと思われます。

 

耐久性もそこそこあるとはいえ、どちらもどうしてもある程度の腐食は避けられない。これをどれだけ遅らせられるか、が結構重要だ。結局腐食は水に触れることで起きます。鉄なら赤錆(Fe2O3)の発生、コンクリートなら水と科学反応して発生した酸(硫酸とか※)による腐食ですね。鉄でいうと構造体である鉄骨の前に配管がやられることも多いと思うのですが、交換を視野に入れた設計がなされていなかったりすると結構大変だったりする。

※コンクリートはアルカリ性。鉄筋コンクリートっていうのは中にある鉄筋が酸化するのをコンクリートのアルカリ性で守っている。鉄筋が露出すると錆びて死んでしまう。コンクリートはかなり腐食に強いと思われているけれど、強酸と反応してボロボロになる。特に下水道管だったり、温泉に触れるようなところは硫黄や硫化水素と反応して結構大変だ。

 

日本特殊塗料等の塗料メーカーが作られている防蝕被覆塗料をちゃんと塗っておくというのが基本だと思うけども、永久にその性能が担保されるものはない。

 

そこをなんとかできないか、というのは研究者の一つのテーマではあるのだけど、面白い記事が出てきた。マッシュルームでコンクリートのひび割れを埋めると言うもの(MIT technology review 老朽インフラに希望、ひび割れを修復する魔法のマッシュルーム)。 ひび割れが生じて、その中を水が流れると胞子が発芽し、炭酸カルシウムの形成を引き起こす菌の繊維がひび割れを埋める。すると、やがては穴が塞がるという仕組み、だそうだが、発想すら僕にはできなかったので驚いた。

 

コンクリートのひび割れは中の水分がなくなっていくためどうしても避けられないですが、こいつを温暖の差で起こる膨張度合いがコンクリートと同じだったり比較的柔らかい有機的なものだった場合劇的に長期耐久度が上がる可能性がある。(過去に樹脂だったりで埋めることが研究されていたと思うけど、熱膨張率がコンクリートと違いさらにひび割れを促進させてしまう等の問題があったと思う。)

 

鉄でも赤錆(Fe2O3)を黒錆(不動態Fe3O4)に変換できるらしく、よく電車の上の方に貼ってある広告でこれを謳って配管を交換せず維持できるシステム(NMRパイプテクター)を売っている日本システム企画と言う会社があったりする。以前からずっと広告を出されているので結構儲かっているのかなと気になっていた会社。(president onlineで記事化もされていた。なぜ老朽化した配管を生き返らせる装置は自治体に評価されないのか。)鉄骨造やRC造の場合は防水材のメンテナンスを定期的にやることが水を防ぐもっとも大切なことだと思うので、回収用の防水材選定をしっかりなされる方は建材選択クラウドtrussをご利用ください。たまには宣伝もしてますか。防水材も奥が深くて本当に面白いんですよ。とてもわかりづらいですけどね。。

 

法人が所有している建物はさすがにメンテナンス計画も作られていて、定期的に行われていることもあると思うけれど、個人所有の建物でしっかりやられているところは少ないのではないか。

 

日本では医療でも予防と言うのは比較的ないがしろにされてきた部分もあると思うのですが、(Medley豊田さんと堀江貴文さんの対談とか参考になる。)建築の世界でも同じような部分はあるのではないかな、と思っています。個人が持っている不動産てとても大きな存在であると思うのですが、株式や融資だったりの金融部分の教育も合わせて自分で知識を獲得しに行かないと完全に無知のままになってしまうので、改善できると社会全体で大きな違いになるんだろうなと思うんですよね。