建設キャリアアップシステムと公契約条例 kubota

建設職人が高齢化し数が減ってきたことから将来建物が建てられなくなることが目に見えてきたため、ようやく職人の就労状況をよくしていこうという動きが本格的に動き出そうとしている。建設キャリアアップシステムというのがそれで、職人それぞれがIDをもちこれまでどのような現場を経験し、どのようなスキルを保有しているかを可視化してやるシステムだ。これがようやく2018年稼働する。(開発しているのはアクセンチュアとマイクロソフト。)

工事の金額に関して腕の良い人が工事に加わっているから高いんですよ、と言う説明をしやすくすることが目的だ。その結果職人の能力に応じた給与が支払われるようになり、業界全体の魅力の向上、入職者の増加を目指す。

そもそもあるべきものだし、欧米諸国では過去整備されてきているものではあるのでようやくその土台ができるのか、というのが感想ではある。ようやく日本でそれが整備されることは革命的な出来事として賞賛されるべきなのだろう。

自分の周りにいる当の職人に聞いてみると特に登録料(5,000円程度だ)を支払って加入するメリットがよくわからないという感想をよく聞く。なぜなら顔見知りからくる仕事しか受けないから、らしい。もちろん場所(都心なのか地方なのか)や業種(元請けなのか下請けなのか)にもよるのだが、不特定多数から仕事を受けるのが当たり前との感覚を持っていた自分としては驚いた。同じ相手だけとの継続的な取引は自分の価値を上げづらい。引く手数多だから請け負う仕事の金額を交渉して上げられるのだろうから。給与の向上と言うよりも人間関係が楽な仕事をしたいというのは一つのスタンスとしてはありえて尊重すべきであるけれど、そのような人が多数いるとそもそもの目的が達成されずまた瓦解する可能性がある。

 

個人的にこうしたら良いと思っているのは、公契約条例と建設キャリアアップシステムを絡ませることだ。建設分野における公契約条例とは地方自治体が発注する工事に関して関わるすべての人が最低賃金以上の給与をもらえるようにすると言う趣旨で言われることが多いが、それを確認することは至難の技で、導入している地方自治体はまだ20程度。導入しているところもどのようにお金が行き渡っているかを確認することなんかできていないだろう。

公契約条例が主眼とすべきなのは、地方自治体が発注する工事はその自治体にいる工事業者に発注されるようにすることなのではないかと思う。

 

理由は

①地方自治体が拠出したお金がその地域で再度還流するようにする。

②災害時等に建設事業者がその地域にいることがとても重要で、その機能を自治体として確保しておく。

の2点だと思う。

地方自治体の拠出するお金は元はと言えば地方税なのだが、これが外部に流出するとその分を外部から何らかの方法で取り戻さないといけない。現状は外部に流出している割合が多く、とても無駄である。何かトラブルがあった場合もその場にいる業者ならばすぐに対応できるが、遠隔地にいる場合対応に時間がかかって良いことがないように思う。②も日常に必要がないだけにないがしろにされがちだが地方自治体が担うべき職務であるように思う。

それを実現するためには下請けでもその地方自治体にいる業者だけが現場に入っているか、の確認が必要になるのだが、現状確認しきる簡単な方法がない。しかし建設キャリアアップシステムのシステムを使えば一発でこれが可能になる。カードリーダーの記録を見て、外部の業者が入っていないかどうか確認すれば良いからだ。

 

これを行うと、特に建設キャリアアップシステムに登録するメリットがないと言っていた業者も登録するメリットが出てくる。自分がいる地方自治体の現場が近い仕事を担当することができるし、その案件は地域制限がつくことから案件獲得の競争率が低くなる。

そうすると建設キャリアアップシステムに蓄積されるデータ量が増えて、日本全国にどのような技量を持った職人がいるか一目でわかるようになるし、発注側はもちろんこれから入職してくる人たちも今後どの分野の担い手が少ないから競争が少ないというような判断ができるようになるはずだ。地方自治体が確認する手間もほぼなく合理的であるように思うけどどうだろう。